ブログBLOG
「頭金いくら?」より大事!資金計画の3ステップで家づくりが失敗しない
 
          目次
はじめに:忙しい共働きでも“迷わない予算決め”を
間取りや設備を見る前に、まず整えたいのが「お金の順番」です。
- 最初に〈総予算〉を決め、
- 次に〈自己資金の配分〉を固め、
- 最後に〈借入のプラン〉へ進む。
この流れさえ守れば、モデルハウスで心が揺れても家計はブレません。
この記事は、新築を検討し始めたばかりの方、とくに時間のない共働き家庭でも今夜から実践できるよう具体的にまとめました。読み終える頃には「わが家はいくらまで、どの条件なら無理なく払えるか」を自分の言葉で説明できるようになりますよ。
執筆者・藤井について
大手ハウスメーカーで10年間、営業として数百組の資金相談と契約・引渡しに携わってきました。現場で痛感したのは「施主側に基本知識がないほど、ムダなコストや不利な条件を避けにくい」という現実です。実家は一級建築士も所属する不動産会社で、注文住宅を熟知した専門家が“土地探しから寄り添う”体制をとっています。メーカーと不動産の両方を見てきた中立の目線から、「自分で判断できる資金計画の型」をお伝えします。
STEP1:総予算を決める。「月いくら」より生涯で無理なく払える「幅」

最初に決めるのは“家本体の価格”ではなく、家づくりに使っていいお金の上限です。月々返済だけで考えると、外構や申請費、火災保険、引越し、家具家電などが後出しになり、気づけばオーバーしていた…という流れになりがちです。だからこそ、先に“総額の天井と許容できる幅”を決めていきます。
共働き世帯なら、二人の手取りが常に最大で続く前提を置かないことがコツです。たとえば手取り合計が月50万円のご家庭。教育費が本格化する時期や車の入替サイクル、老後資金への積立を年表に置き、住居費に回せる額を「安全・標準・攻め」の三段階で考えます。安全寄りなら、可処分所得のうち“住まい関連”に回すのはおおむね四分の一程度。そこから逆算して、年間いくらを住まいに配分できるかを決め、その範囲で総予算の上限を言語化します。
工務店やハウスメーカー、見学会へ行く前に、この“上限と幅”を書いたメモを家族で共有しておくと、目の前のオプションや特典に心が動いても、線を越えない判断ができます。営業トークは「月々〇万円ならいけます」に寄ってきますが、あなたは「生涯でここまで」と言い切れる状態を先に作る。これが、後戻りや後悔を減らす最短ルートです。
[元・大手HMの営業マン]藤井からのアドバイス①
見学予約の前日、家族で“お金の上限と幅”を声に出して読み合わせてください。メモはスマホのメモ帳でもOK。モデルルームや打合せで数字が揺れそうになったら、そのメモに一度立ち返る。これだけで交渉力が一段上がりますよ。
STEP2:自己資金を設計。「全部頭金」が正解ではない

自己資金は「頭金」だけではありません。家づくりは工事中や引渡し前後に、どうしても“予定外の支出”が生まれます。造作の追加、外構の見直し、引越し費、カーテンや家電の買い替え。さらに入居後1年は、光熱費の上下やちょっとした修繕で現金が沈みやすい時期です。そこで、自己資金は次の三つに分けて考えます。
②予備費:工事中〜入居1年の不測の出費に充てる“機動力のある現金”。
③頭金:上の二つを確保した“残り”を入れる。
たとえば貯蓄が800万円あるなら、まずは数か月分の生活費に相当する額を防衛資金として別口座に逃がし、次に工事〜入居直後の揺れに備える予備費を確保。残りを頭金へ回すのが基本線です。頭金を増やせば利息は減りますが、現金が枯れると“育休と教育費の重なり”のような予期せぬ波で家計が軋みます。繰上返済という後からの調整弁もある以上、「まず守り、あとで攻める」が初心者にとっては合理的です。
[元・大手HMの営業マン]藤井からのアドバイス②
頭金は“見栄”になりがちです。ローン控除や金利差は、将来の繰上返済や借換えで調整可能ですが、枯れた現金は一瞬で生活の自由を奪います。着工合意の前に“防衛資金口座”を分け、カードやアプリから触れないようにしておくのも一つの方法です。
STEP3:借入を計画する。金利タイプと名義は「変化に耐えるか」で選ぶ

借入は「いくら借りられるか」ではなく、「どう借りれば家計が安定するか」を軸にします。
見るポイントは以下の三つです。
①返済比率
②金利タイプ
③そして名義の組み方
返済比率は“可処分所得に対して何%か”で把握すると実態に近づきます。とくに教育費が立ち上がる時期や、車の買い替え、ライフイベントの重なる年は、返済比率が跳ねやすい。ここで“金利が上がっても壊れない線”を先に決め、その線の中で固定・変動・ミックスを選び分けます。たとえば、共働きで将来の繰上返済余力があり、教育費のピークが十数年先なら、変動をベースに一部固定でリスクを割る設計もあります。逆に、異動や独立など収入変動が想定されるなら、全期間固定で“予算の見通し”を優先する選択が合います。
名義は、単独・収入合算・ペアローンのどれが“将来の身軽さ”を保てるかで検討します。控除や借入枠のメリットに目が行きがちですが、団信や離職・産休、万一の事態に備えた解約のしやすさ、住み替え時の柔軟性まで含めて比較するのが実務です。
<関連記事>
住宅ローン審査に落ちない!プロが教える事前準備とチェックリスト
[元・大手HMの営業マン]藤井からのアドバイス③
住宅ローン金利のニュースにも振り回されないよう、まずは家族で「このくらい上がっても大丈夫」という目安を決め、その範囲に収まる返済期間と金利タイプを選びましょう。固定は将来の安心、変動は今の軽さという性格の違いを踏まえて、どちらがわが家に合うかを決める、という順番が失敗しません。
なお、固定と変動を半分ずつにする“ミックス”は、理屈ではリスク分散になりますが、固定金利が割高なぶん総返済は重くなりやすいのが実情です。特別な理由がない限り、数字で見ると得になりにくいため、基本はどちらかに寄せて借り方を決めることをおすすめします。
諸費用と入居後コスト。「買うまで」と「住み続ける」を知る

家づくりの見積書は本体価格に目が行きますが、実際に家計を揺らすのは“外側”です。設計・申請・登記、地盤改良、火災・地震保険、つなぎ融資の利息、引越し、カーテン・家電、外構の後回し分。これらを最初から総予算に内包して、別紙ではなく“同じ紙の中”で管理してください。
入居後は、固定資産税や光熱費の実額、屋根外壁や給湯器などの更新サイクルが家計にひびいてきます。マンションなら管理費と修繕積立、戸建てなら“自分で積み立てる修繕費”が必要です。10年・15年・20年の節目にどんなメンテが来るかを前もって書き出し、教育費の山とかち合わないように調整するだけで、将来の“痛い出費”に慌てなくなりますよ。
この記事の考え方をそのままあなたの家計に当てはめる方法です。総予算の上限と幅を決め、自己資金を三つに分け、借入の条件を“変化に耐える”基準で決める。ここまで来たら、諸費用と入居後コストを同じ表に載せて、空白の年に“もしもの予備費”を置いておく。これで、どの営業トークが来ても、判断の軸はぶれません。
本体価格以外にどんな費用がかかるのか、その注意点を以下の記事でも解説しています。
<関連記事>
家づくりで“絶対に損しない”ためのお金の落とし穴5選
よくある質問(FAQ)

Q1:いま賃貸ですが、買い時はいつですか?
A. 価格や金利の“底”を狙うより、家計の防衛資金が整い、教育費の立ち上がりとバッティングしないタイミングが現実的です。この記事の3ステップで「買っていい状態」を先に作ってください。
Q2:頭金ゼロでも買えますか?
A. 買うだけなら可能です。ただし“防衛資金と予備費が十分にあること”が条件です。ここが薄い状態のゼロ頭金は、ちょっとした揺れで家計がきしみやすくなります。
Q3:固定と変動、どちらが得ですか?
A. 家計設計次第で変わりますし、正直、正解はわかりません。ただし、私なら変動を選びます。なぜなら、①一般に固定より金利が低く、その差が“完全に埋まるほど”上がる可能性は高くないと見ていること、②金利の影響は残債が多い初期ほど大きく、当初返済を軽くできる変動の利点が効くこと(繰上返済で調整もしやすい)、③もし上昇局面になっても、家計側は収入改善や借換え・返済計画の見直しで対応しやすいからです。
Q4:共働きでペアローンは有利ですか?
A. 控除や借入枠の面で有利になる一方、団信・離職・離婚などのリスク対応が複雑化します。将来の身軽さを失わない設計を優先し、単独や収入合算との比較検討をおすすめします。
Q5:予算が届きません。どこを削れば?
A. まずは、家を大きくしすぎないこと。延床面積が大きくなればなるほど、コストは高くなります。その上で、“後から足せるもの”を残し、“今しかできない構造・家の性能・間取りの骨格”を優先します。外構や造作、設備の一部は入居後に回すと、調整しやすいです。
まとめ:お金の“順番”が決まれば、家づくりは9割うまくいく
 <当社施工事例>
<当社施工事例>
資金計画は、以下の順番を外さなければ、大きな失敗は避けられます。
①生涯視点で総予算の上限と幅を決め、
②自己資金を防衛資金・予備費・頭金に分けて“守り”を先に固め、
③借入は“変化に耐えられる”プランで選ぶ
諸費用と入居後コストまで同じ紙で管理すれば、相場やニュースに振り回されることも減ります。家は“高い買い物”ではなく“長い支払い”。今日の決断は、最高の仕様を全部盛りにすることではなく、壊れない家計の設計図を整えることです。ここまで読んだあなたは、すでに半歩前に進んでいます。あとは数字をあなたの家計に置き換えるだけです。

