ブログBLOG
後悔しない玄関づくり|サイズ・収納・配置の「使いやすさの基準」
目次
はじめに。「毎日の快適さ」を左右する玄関
<当社施工事例>
新築を考える時、多くの方はリビングの広さやキッチンの設備に意識が向きがちです。しかし実際の生活を想像すると、家に帰って最初に通るのは玄関で、朝一番に家族が動き出す場所もまた玄関なんですよね。
靴を脱ぐ・置く・カバンを置く・コートを掛ける・子どもを送り出す。ほんの数分のことですが、使い勝手が悪い玄関は毎日ストレスになります。
そこで、この記事では、以下を中心に玄関づくりで迷いやすいポイントを一つずつご紹介していきます。
- サイズの考え方
- 収納の選び方
- 玄関からLDKに入る動線
- 扉の有無による違い
玄関がスムーズに使える家は、朝の身支度も帰宅後の片づけもラクになります。
それは、私が18年間建築資材の商社マンとして現場に出入りし、多くのご家族から聞いてきた「住んでみて本当に役立つ話」から実感していることです。私自身、タイル工事と建材販売を営む家業で育ち、子どもの頃から“現場の空気”の中で生活してきました。だからこそ、カタログ上の「おしゃれな玄関」より、暮らしてみて楽になる玄関をおすすめしたいと考えています。
玄関の広さは「ムリなく動けるか」
<当社施工事例>
玄関の広さを決めるとき、多くの方が数字だけで判断しようとします。しかし本当に大切なのは、「家族が毎日どう動くか」という視点です。家族4人が同時に出かける朝の場面を想像すると、玄関はただ立っているだけの場所ではなく、靴を履く・荷物を揃える・上着を羽織るという複数の動作が重なる場所になっていることがわかります。
また、広さだけを優先すると、ただの“広い通路”になり、収納が減ったり、動線が長くなったりして、快適さにつながりません。逆に、小さくまとめすぎると、物が溢れたり、渋滞が起きて動きにくくなるなど、毎日のちょっとしたストレスが積み重なっていきます。
広さを考える際、ひとつ覚えておくと便利なのが 「1.5P」や「2P」という寸法
1Pはおよそ910mm(約91cm)で、1.5Pなら約1m35cm、2Pなら約1m82cm程度になります。玄関の土間部分は1.5P×1.5P程度を確保すると、家族並んで靴の脱ぎ履きをしても体がぶつかりにくく、来客時も窮屈さを感じません。
特に重要なのが“幅”。奥行きはある程度調整できますが、幅だけは狭めてしまうと大人がすれ違うことが難しくなり、とても使いにくい玄関になってしまいます。
図面の数字を眺めているだけでは気づきにくい部分なので、玄関に立つ自分たちの動きを思い浮かべながら検討すると、無理なく動けるサイズ感が自然と見えてきます。
[元・建築資材の商社マン]井上からのアドバイス①
数字を見る前に、朝の慌ただしい玄関で自分や家族がどんな動きをしているかを思い出してみてください。
必要な広さを「感覚」で認識することも、失敗を防ぐコツです。
シューズクロークは広さより「使いやすさ」を優先
<当社施工事例>
シューズクロークは今や人気設備のひとつですが、「とにかく広くしたい」という思いだけで計画すると、実際には使いづらくなってしまうことがあります。
そんなシューズクロークは、通路幅をどれだけ取るかで使い勝手が変わります。理想は幅2P(約1m82cm)ほどあると、ベビーカーを押してもゆとりがあります。ただ、実際の間取りでは幅1.5P(約1m35cm)でも十分通れますし、入り口を中央とし、両サイドの稼働棚を30cmでつくれば、収納量とのバランスも良くなります。
入り口の目隠しの方法も暮らしやすさに影響します。扉を付けると確かに隠れますが、引きしろや開閉スペースが必要になりますし、コストも増加してしまいます。実際に住み始めると大体は開けっ放しにもなります。そこでおすすめなのが、ロールスクリーンです。必要なときにサッと下げられるうえ、コストを抑えることもできます。
シューズボックスのみでも構わない
<当社施工事例>
シューズクロークが取れるのが理想ですが、取れない場合の選択肢としてシューズボックスのみでも構いません。もちろん靴そのものが少ない家庭もありますので、シューズボックス(下駄箱)のみのお宅も山中木材では多く手がけています。
玄関収納の話になると、多くの方が靴の数に注目します。もちろん収納量は大切ですが、実際に暮らしてみると、玄関には靴以外にも多くの物が集まることに気づきます。例えば、家の鍵、電子キー、印鑑、宅配用ハンコ、子どもの上履き、自転車の鍵、ちょっとしたメモ、帽子、手袋、日焼け止めetc…。
こうした細々したものが置き場を失うと、玄関はあっという間に散らかります。
例えば、写真のような、コの字型シューズボックスを選ぶと、小物を置ける天板が生まれますし、外出前に身だしなみも整えやすくなりますよ。
シューズボックスの幅は一般的に1.5P(約1m35cm)前後を確保すると、家族4人分の靴でも無理なく収納できます。40足程度、足元の収納を使えばさらに10〜15足ほど追加できます。収納量だけで判断せず、「玄関での身支度がスムーズになるかどうか」を軸に選ぶと暮らしの満足度が大きく変わります。
[元・建築資材の商社マン]井上からのアドバイス②
靴以外に玄関へ持ち込みがちな物を紙に書き出してみましょう。収納計画が見える化され、後悔や不足がなくなりますよ。
玄関からLDKの入り方は「家全体の動線」を左右する
<当社施工事例>
玄関の位置は家の顔であると同時に、家の動線を決定づける重要ポイントでもあります。どこからLDKに入るかによって、毎日の動きの快適さがまるで違います。
理想は、玄関からリビングへ自然に入れる動線です。リビングは家族が集まる場所なので、家に帰ってきたときの導線が自然につながるというメリットがあります。
次に選択肢となるのがダイニングへの導線。買い出しの荷物を持ち帰ったときや、子どもが帰ってきてすぐに手を洗う動作など、生活動作を考えると非常にスムーズです。
注意したいのはキッチンへの直接入室です。キッチンからの出入りが増えると、冷蔵庫の位置や収納計画が制限され、結果として収納量が大きく減ってしまうケースをよく見てきました。また、玄関からキッチンの足元が見える配置は、来客時に生活感が丸見えになるため、避けたほうが良いですよ。
[元・建築資材の商社マン]井上からのアドバイス③
玄関からLDKへの動線を先に決めると、間取り全体が驚くほど組みやすくなります迷ったらまずここを優先して考えてみてください。
玄関ホールの扉は付けるべき?
<当社施工事例>
玄関とLDKの間に扉を付けるべきかどうかは、よく迷われるポイントです。扉があると、冬の冷気が直接リビングに流れ込みにくくなり、空調効率が上がって快適に過ごせます。また、来客があったときに生活感のあるLDKが直接見えにくくなるという安心感もあります。
一方で、扉がないほうが開放感が出るという声もあります。ただ、玄関は外気の影響を受けやすい場所です。扉をつけることで、冬の寒さの入り込み具合が大きく変わることを考えると、「あるほうが快適になりやすい」というのが私の実感です。
靴の出し入れをしやすい位置に収納を置くか、来客時に何を隠したいかなど、生活の細かい動きを思い浮かべると、扉があると助かる場面が多いと感じるはずです。
よくある質問(FAQ)

Q1|玄関の広さは、どの部分から調整するべきですか?
広げるにしても削るにしても、まずは幅から考えてください。奥行きはある程度調整ができますが、幅を削ると動きづらさにつながります。
Q2|シューズクロークの通路幅は、どれくらいあれば使いやすいですか?
広ければ良いわけではありません。収納する物と家族の動きをイメージし、必要な最低幅を確保することが大切です。
Q3|玄関ドアにガラスがあると寒くなりますか?
ガラス部分は熱を通しやすい傾向があります。ただし断熱性能が高い製品も増えているため、採光と性能のバランスで選ぶことが大切です。
Q4|玄関ホールの扉は開き戸と引き戸、どちらが良いですか?
開閉スペースや動線の重なりを考えると、間取りによって向き不向きがあります。家族がどこから入ってどう動くかを前提に選ぶのがポイントです。
Q5|玄関とリビング階段の位置は気にしたほうが良いですか?
位置関係によっては視線や動線に影響することがあります。玄関からリビングへ自然につながるかどうかを基準に検討すると、暮らしやすさが高まります。
まとめ。「使いやすい玄関」は、小さな工夫の積み重ね
玄関は、家族全員が毎日かならず使う場所です。広さ、収納、配置、LDKへの入り方——どれも小さな要素ですが、ひとつひとつを丁寧に選ぶことで、驚くほど暮らしやすい玄関になります。今回ご紹介した内容は、難しい専門知識ではなく、日々の生活の中で感じる「ちょっとしたストレス」を解消するための考え方です。これから家づくりを進めていく方が、玄関の計画を進める際にこの記事が少しでも役に立てば嬉しく思います。
