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「契約後に数百万円アップ」は防げる?見積書と契約書で見るべき【落とし穴】5選
目次
はじめに:その見積もり、契約後も同じ金額のままですか?

こんにちは、元・大手ハウスメーカーの営業マン藤井です。
家づくりでよくあるのが、こんな場面です。何社かを比べて契約し、数か月かけて間取りや仕様を打ち合わせたら、最終の見積もりが契約時より数百万円も高くなっていた。内訳を見ると、カーテンは入っておらず、照明は玄関や廊下の分だけ。外構は「別途」で、水道の引き込みや地盤改良の費用も加わっている。どれも契約前の見積書には書かれていなかったものです。ハンコを押したあとでは、「聞いていない」と言っても話し合える余地はかなり小さくなります。
多くの方は見積書の合計金額だけを他社と比べます。しかし、契約後に金額が上がるかどうかを決めるのは、合計欄より上に何が書かれていて、何が書かれていないか。そして、ほとんどの方が読まずにハンコを押す契約書の条項です。
今回は、見積書を作る側にいた元営業の目線から、見積書で3つ、請負契約書で2つの落とし穴をお伝えします。総予算の決め方は以前の記事でまとめましたので、今回は「書類の読み方」に絞ります。
※あわせて、こちらの記事も参考にしてください。
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この記事の結論
- 見積書は合計金額ではなく、「一式」の中身、載っていない費用、仮の金額の3つを見る。
- 間取りと仕様が決まり、その内容で総額が出るまでは契約しない。
- 請負契約書は「値上げ」と「解約」の2つの条項を契約前に読み、分からない点は質問して記録に残す。
なぜ「契約したあと」に金額が上がるのか?

結論から言うと、契約前の見積書は、他社と比べられることを前提に作られることが多いからです。
必要なものを最初から全部入れると、それだけで「高い会社」に見えて選ばれにくくなります。そこで設備は最低限のグレードにし、外せる項目は外して金額を抑え、足りない分は契約後の打ち合わせで足していくのです。
契約後はもう他社と比べられず、施主も追加の金額を厳しく見なくなります。どこで追加が出るかを分かっていながら書かないことは、残念ながら業界ではまだ珍しくありません。ただし、資材価格の上昇のように住宅会社にもどうにもならない値上がりもあります。これは【落とし穴④】でお話しします。
【見積書編】契約前の見積書で見るべき3つの落とし穴

① 「一式」の一行に、グレードと数量が隠れている
見積書に「〇〇工事 一式」とだけ書かれた行は、何がどれだけ入っているのかが分かりません。合計金額が同じでも、中身は他社より少ない、ということが起こり得ます。
たとえば「住宅設備 一式」としか書かれず、メーカー名もシリーズ名もない見積書。モデルハウスで見たキッチンが入ると思っていたら、実際は一番下のグレードだった、というのはよくある話です。グレードを上げるだけで、一般的な目安として70万〜150万円ほどの追加になることもあります。「照明器具 一式」も、玄関や廊下、水回りの分だけでリビングや寝室は入っていなかった、というケースがあります。
性能も同じで、見積書や契約書に「この家の数値」がなく、聞くと「間取りによります」と返ってくることがあります。書かれていない性能は、約束されていないのと同じです。
対策は、「一式」の行の内訳と品番(メーカー名・シリーズ名・グレード)、照明やコンセント、網戸などの数量を書いてもらうこと。そのうえで仕様書や図面と見積書の行が一致しているかを見比べてください。
[元・大手ハウスメーカーの営業マン]藤井からのアドバイス①
「一式」という書き方そのものが悪いわけではありません。大切なのは、何が入っていて何が入っていないかを書面でもらうこと。口頭の「全部入っていますよ」は、あとで言った言わないの原因になります。内訳をお願いしてはぐらかす担当者なら、それも見極めの材料になりますよ。
※設備の選び方は、こちらの記事が参考になります。
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② 見積書に「載っていない費用」が、あとから請求される
見積書の合計は、住み始めるまでの総額ではありません。本体工事以外の費用が「別途」「対象外」として外されていたり、そもそも行がなかったりするからです。
よくあるのが、足場や仮設トイレ、敷地内の給排水といった付帯工事を分けて、本体価格だけで「坪単価〇万円」と安く見せるケース。水道の引き込みや擁壁、解体、道が狭い場合の運搬費や警備員の費用など、土地に関わる工事も外されがちです。契約前に現地と役所を調べれば分かるはずなのに、着工間近になって「水道の引き込みに150万円ほどかかります」と言われるケースもあります。役所での確認が甘いと、契約後に高さの制限(斜線制限)や建ぺい率に引っかかり、間取りの変更が必要になることさえあります。
カーテンはレールだけ、網戸やカップボード、アクセントクロスはオプション、という見積書も少なくありません。登記費用やローンの保証料、検査手数料など住宅会社以外に払うお金も、少なめに書かれがちです。
見積書の最後のページや欄外にある「別途工事」「本見積もりに含まないもの」は必ず読んでください。そのうえで「この見積もりにないもので、住み始めるまでにかかるお金を全部教えてください」と聞き、1枚の表にまとめてもらうのが確実です。
[元・大手ハウスメーカーの営業マン]藤井からのアドバイス②
これから土地を買う方は、その土地にかかる付帯工事や造成工事の見積もりまで出してもらってから、買うかどうかを決めてください。土地代が安くても、水道の引き込みや擁壁の工事で、結果的に割高になることがあるからです。
※費用の全体像や土地選びの注意点は、こちらの記事で解説しています。
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③ 「仮の金額」と「仮のプラン」のまま契約してしまう
見積書の中で「予算」「概算」「調査後に確定」と書かれた行と、仮の間取りで作った見積もりは、契約後にほぼ確実に金額が動きます。動く前提で、中身を確かめておきましょう。
代表的なのが、「調査結果による」と0円のまま契約し、あとから一般的な目安で50万〜100万円ほど追加になる地盤改良工事です。近隣の地盤データを見れば、必要になりそうかの見当はつきます。外構も、駐車場2台とカーポートを希望しているのに外構全体で150万円の予算、といった見積書がありますが、駐車場2台分だけで200万円以上かかることは珍しくありません。ローンの保証料(一括前払いなら借入額の2%前後が目安)が0円になっていることもあります。
もう一つが「仮のプラン」です。契約前の見積もりは、凹凸の少ない総二階で窓や収納も少なめの「安く建つ間取り」で作られがち。契約後に要望を足していくと、坪数が同じでも金額は上がります。「契約後にゆっくり間取りを決めましょう」は施主にとってよいことがなく、契約まで間取りの担当者に会えないのでは相性も確かめられません。要望が整理できていれば、間取りは数週間ほどで固められます。
「予算」「概算」の行は「何をもとにこの金額にしましたか?」と根拠を聞き、確定した間取りと仕様の見積もりで契約する。これが大原則です。
[元・大手ハウスメーカーの営業マン]藤井からのアドバイス③
初回の打ち合わせで「契約後の追加費用は、平均でどのくらい出ていますか?」と聞いてみてください。きちんとした会社ほど具体的に答えてくれます。「ご要望次第です」とはぐらかすなら、見積書を安く見せている可能性を疑ってよいでしょう。
【契約書編】ハンコを押す前に読むべき2つの条項

請負契約書(建物の工事を依頼する契約書)は文字が細かく、読まずにハンコを押す方がほとんどです。全部でなくて構いません。「金額が変わる条件」と「やめるときのルール」の2か所だけは、契約前に必ず読んでください。
④ 「価格変動条項」があると、契約後の値上げも契約違反とは言いにくい
契約後に「資材が値上がりしたので金額を上げさせてください」と言われても、請負契約書に価格変動の条項があれば、契約違反とは言えない可能性が高いです。
価格変動の条項とは、物価や経済の状況が大きく変わったときに、契約後でも金額を見直せるという取り決めです。「経済事情の急変」などの表現で書かれ、今では注文住宅の請負契約にもほとんど入っていると考えてよいでしょう。工期も同様で、資材が届かないなど住宅会社のせいとは言えない理由なら延ばせる内容が多く、延びた分の家賃やつなぎ融資の利息を負担してもらえる可能性は低いのが実情です。
とはいえ、この条項自体は悪いものではありません。条項がなければ原価の上昇を価格に反映できず、住宅会社の経営が苦しくなります。工事の途中で会社が倒れれば、一番困るのは施主です。
問題は「いくら上げるか」です。決め方まで契約書に書かれていることは少なく、国のルールもないため、話し合いになります。住宅会社が自社で吸収する努力をしたうえでの提示かを確認しましょう。最近は、値上げや工期延長の可能性について別に合意書を交わす会社や、見積書の有効期限を短くする会社も出てきています。
契約前に「価格変動の条項はどこにありますか?」「上げる場合、金額はどう決めて、どう説明してもらえますか?」と聞き、見積書の有効期限も確認しておきましょう。
[元・大手ハウスメーカーの営業マン]藤井からのアドバイス④
価格変動の条項が「ある」か「ない」かで、会社の良し悪しを判断しないでください。見るべきは、その条項をどう運用しているかを正直に説明してくれるかどうかです。説明の内容は、メールなどに残してもらうと安心ですよ。
⑤ 「解約」のルールを知らないまま契約する
建物の請負契約は、家が完成する前であれば、施主の側からいつでも解除できます(民法第641条)。ただし、住宅会社の損害(それまでにかかった費用など)を賠償する必要があり、解約が遅くなるほど、戻ってくるお金は少なくなります。
契約直後で打ち合わせもほとんど進んでいなければ、契約金の多くが戻る可能性があります。しかし建築確認が下りて着工を待つ段階では、申請の作業や外注費がすでにかかっています。資材の発注まで進んでいれば、払った契約金(たとえば100万円)では足りないこともあります。差し引く範囲も、外注の実費だけの会社から社員の打ち合わせ時間まで計算する会社まで、さまざまです。
だからこそ契約前に「解約することになったら、どの時点から何の費用がかかりますか?」「契約金はどの段階でいくら戻りますか?」と聞いておくことが大切です。「やめるつもりはありませんが、念のため」と前置きすれば失礼にはなりません。答えはメールなど記録に残る形でもらいましょう。
なお、土地の売買契約は仕組みが違います。手付金を放棄して解除する「手付解除」には期限があり、過ぎると負担の大きい「違約解除」になります。住宅ローンが通らなかったときに白紙で解除できる「ローン特約」にも期限があります。手付金は土地代の5〜10%程度が一般的な目安で、交渉できることもあります。土地の契約書でも、解除の期限は必ず確認してください。
[元・大手ハウスメーカーの営業マン]藤井からのアドバイス⑤
土地の契約書に「登記の司法書士は売主側が指定する」という特約が入っていることがあります。司法書士の報酬は事務所ごとに自由に決められるため、指定を外してもらうか、ほかの司法書士の見積もりを示して金額を合わせてもらうだけで、数万円以上変わることもありますよ。
※土地探しの進め方や注意点は、こちらの記事をご覧ください。
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ハンコを押す前日にやっておきたい最終確認

5つの落とし穴の確認事項を、書類ごとにまとめました。契約の前日までにご家族で見積書と契約書を読み合わせ、分からない行に印をつけて、担当者へまとめて質問してください。答えはメールや打ち合わせ記録に残しましょう。
見積書のチェックリスト
- 「一式」の行に、内訳・品番・数量が書かれているか
→ 質問例:「この一式の内訳と品番を出してください」 - 「別途」「対象外」になっている項目はないか
→ 質問例:「住み始めるまでにかかる費用で、この見積もりにないものを全部教えてください」 - 「予算」「概算」と書かれた行の根拠は何か
→ 質問例:「何をもとにこの金額にしましたか?」 - 確定した間取りと仕様で出された見積もりか
→ 質問例:「この見積もりは、この間取りと仕様で確定ですか?」
契約書のチェックリスト
- 価格変動の条項はどこにあり、値上げの金額はどう決まるか
→ 質問例:「値上げする場合、金額はどう決めますか?」 - 解約したときの費用と返金はどうなるか
→ 質問例:「解約するとしたら、いつから何の費用がかかりますか?」
書類に出てこない「人」も大切です。家の出来を左右するのは、間取りを考える担当者と現場の監督。誰が担当になるのかを契約前に確認し、できれば指名しておきましょう。急ぐ理由がないなら、確認が終わるまで契約しなくて大丈夫です。
よくある質問(FAQ)

Q1. 値引き交渉をすれば、追加費用の分を取り戻せますか?
→ 大きな値引きができるのは、最初の見積もりに余地が含まれていたからとも言えます。値引きの額より、必要な費用が最初から正直に入っているかを見るほうが、結果的に損をしません。
Q2. 契約後に値上げを言われたら、断ることはできますか?
→ 価格変動の条項があれば、契約違反と言うのは難しいでしょう。ただし金額は話し合いで決まるので、根拠と住宅会社側の努力の説明を求めてください。納得できなければ解約も選択肢ですが、その時点までの費用はかかります。
Q3. 契約金を払ったあとに住宅会社が倒産したら、どうなりますか?
→ 契約金は戻らない可能性が高く、着工後なら工事を引き継ぐ会社も探さなければなりません。負担を減らす「完成保証制度」がありますが、加入は義務ではなく、会社の経営状態によっては入れないこともあります。費用は施主負担が多く、一般的な目安は10万〜15万円程度。加入できるかを契約前に確認しましょう。
Q4. 「契約しないと設計担当とは打ち合わせできません」と言われました。普通のことですか?
→ 珍しくはありませんが、間取りが決まらなければ正しい金額は出せません。契約前に間取りの担当者と話せるか、確定した間取りで見積もりを出してもらえるかを確認し、難しければ比較する会社を増やすことも検討してください。
Q5. 2027年4月から、設計の契約が書面で義務化されると聞きました。今から契約する私にも関係がありますか?
→ 改正建築士法により、2027年4月1日以降に結ぶ契約から、建築士が行う設計・工事監理の契約は、建物の大きさにかかわらず書面で交わすことが義務になります(これまでは延べ面積300㎡超の建物が対象)。注文住宅では設計と工事を1つの請負契約にまとめることも多いので、今から契約する方も、契約書で設計や工事監理がどう書かれているかを一度確認しておくと安心です。
国土交通省:改正建築士法の施行に伴う関係政令を閣議決定<外部リンク>
まとめ:見積書は「書かれていないもの」を、契約書は「もしもの時」を読む
<当社施工事例>
契約後に金額が上がる理由の多くは、契約前の書類にすでに表れています。見積書では「一式」の中身、載っていない費用、仮の金額。契約書では価格変動の条項と解約のルール。どれも、契約前に質問すれば答えてもらえるものです。
見積書を作る側にいた人間としてお伝えしたいのは、「質問されると困る見積書」には困る理由がある、ということです。分からない行に正面から答えてくれる会社かどうかが、契約後の安心につながります。分からないところを残したまま、ハンコを押さないでください。
これから家づくりを始める皆さんが、契約後の見積書に驚くことなく、安心してマイホームを迎えられることを心から応援しています。
